「プレコンセプションケア」という言葉を目にした、耳にしたことはありませんか。将来のライフプランや健康に関わる考え方で、若い世代に向けて発信される場合もありますが、からだのことを思えばあらゆる世代が知っておきたい知識でもあります。
もっとも、この言葉が世界的に使われるようになったのは、この20年ほどのことです。少しずつ意味合いや対象を広げながら、現代を生きる私たちの健康を支える「新しい知識」として進化してきました。
プレコンセプションケアについて、一緒に考えてみましょう。
この記事のポイント
- プレコンセプションケアという言葉が世界で公式に使われ始めたのは2006年(米国CDC)
- 当初は女性のみが想定されていたが、2012年にWHOが男性やカップルにも対象を拡大
- 2025年、こども家庭庁が「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定し国家的施策に
「プレコンセプションケア」はいつ、なぜ生まれたか
プレコンセプションケアの歴史は、医学の研究とともに歩んできました。そのルーツは1980年代の「Barker仮説」にさかのぼります。これは、お腹の中にいるときの環境や出生時の体重が、将来の生活習慣病のリスクに影響する場合があるという研究です。ここから、「妊娠前からの健康づくりが大切である」という考え方が育まれました。
そして2006年、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)が「プレコンセプションケア」を提唱しました。当時は、主に女性の健康と将来の妊娠に向けたケアが中心でしたが、社会の変化とともに概念もアップデートされています。
2012年には世界保健機関(WHO)がその定義を拡張し、男性やパートナーも含めたケアであると位置づけました。つまり、女性だけでなく性別を問わず、また社会全体としてもプレコンセプションケアを考えることが好ましいという方向へ変化したのです。
日本では2015年に国立成育医療研究センターに「プレコンセプションケアセンター」が設立され、研究と啓発が本格化しています。さらに、2025年にはこども家庭庁が「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定し、国を挙げての健康支援へと発展しています。
妊娠のためだけじゃない?すべての男女に関係する「健康の常識」
プレコンセプション(Preconception)という言葉は、「Pre(〜の前の)」と「Conception(受胎・妊娠)」を組み合わせたものです。言葉の成り立ちを見ると将来の妊娠のためだけのものに思えますが、先ほども触れたように現在の定義はもっと広い意味を持っています。
それは将来、子どもを持つ・持たないという選択にかかわらず、「一人ひとりが健康で豊かな人生を送るための、普遍的なヘルスリテラシー」としての役割です。自分のからだの状態を知り心地よく過ごすための知識を得ることは、人生を送る上での基盤となります。
この概念が少しずつ進化し対象が広がってきたことは、社会が「健康の起点をどこに置くべきか」を問い続けてきた結果でもあります。「いつか」の選択肢を広げるために、「今」のからだを見つめ直す。プレコンセプションケアは、すべての人に向けられた健康の知識になりつつあります。
プレコンセプションケアをベースにこれからの健康を考える
プレコンセプションケアは、男女問わず意識したいウェルネスのテーマです。国立成育医療研究センターなどの情報に基づくと、私たちの毎日の生活習慣はからだの働きにさまざまな影響を与えると分かっています。
たとえば、睡眠不足や偏った食事、喫煙、過度な飲酒、そして慢性的なストレスは、男女ともにホルモンバランスや自律神経、さらには生殖機能など、からだが本来、持っている働きに何らかの影響を及ぼします。
「健康に気をつける」というと、つい特別なことをしなければならないと考えがちです。しかし大切なのは、日々の習慣の積み重ねが今と将来のコンディションを作るということへの理解です。
男性にとっても女性にとっても、自分自身の生活習慣を見直しからだへの負担を減らしていくことは、長く健康を保つための第一歩となります。
今日から意識したい基本のセルフケア
からだの未来のために、今日から取り入れられるセルフケアにはどのようなものがあるのでしょうか。ご自身のライフスタイルに合わせて選択できる情報を、いくつか紹介します。必ずしも「こうしなければならない」と意識するものではなく、どれが合うか考えてみるのをおすすめします。
適正な体重の維持とバランスの良い食事
今の自分の状態を知る一つの目安となるのが、BMI(体格指数)です。
極端なダイエットによる痩せすぎや逆に肥満傾向にある状態は、ホルモンバランスに影響を及ぼす場合が考えられます。特定の食品だけを食べるのではなく、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い食事を心がけることで、からだに必要な栄養素を届けることができるでしょう。
日本肥満学会の判定基準
| BMI値 | 判定 |
|---|---|
| 18.5未満 | 低体重(痩せ型) |
| 18.5〜25未満 | 普通体重 |
| 25〜30未満 | 肥満(1度) |
| 30〜35未満 | 肥満(2度) |
| 35〜40未満 | 肥満(3度) |
| 40以上 | 肥満(4度) |
世界保健機関(WHO)の判定基準
| BMI値 | 判定 |
|---|---|
| 16未満 | 痩せすぎ |
| 16.00〜16.99以下 | 痩せ |
| 17.00〜18.49以下 | 痩せぎみ |
| 18.50〜24.99以下 | 普通体重 |
| 25.00〜29.99以下 | 前肥満 |
| 30.00〜34.99以下 | 肥満(1度) |
| 35.00〜39.99以下 | 肥満(2度) |
| 40.00以上 | 肥満(3度) |
質の良い睡眠と、ストレスを労わる習慣
心身の回復には、質の良い睡眠が欠かせません。睡眠不足や慢性的なストレスは自律神経に影響し、からだの不調につながることがあります。
- 夜眠る前はスマートフォンやパソコンの画面を見るのを控える
- 十分な睡眠時間を確保する
- 趣味やリラックスできる時間を作り、心に余裕を持たせる
これらは、からだの本来の働きをサポートするための習慣です。忙しい毎日の中でも、1日の終わりに少しだけ自分を労わる時間を持つことも大切です。
「プレコンチェック」で、からだの現在地を専門的に知る
国立成育医療研究センターはウェブサイトに「プレコン・チェック」を掲載しています。こちらで、セルフチェック形式で自分のからだについて確かめることができます。
以下が、そのチェック項目です。できるだけ多い方がからだにとって良い状態ですが、無理なく少しずつチェック数が増えるような生活を送ってみてはいかがでしょうか。
〈プレコン・チェックシート 女性用〉
- 適正体重のキープ
- 危険ドラッグを使用しない
- 禁煙・受動喫煙を避ける
- 有害な薬品を避ける
- アルコールを控える・妊娠したら禁酒
- 検査・測定で生活習慣病のチェックをする
- バランスの良い食事
- がんのチェック
- 葉酸の積極的摂取
- HPVワクチンの接種
- 1日60分以上の運動
- かかりつけの婦人科医をつくる
- 持病・妊娠について知る
- ストレスをためこまない
- 家族の病気を知る
- 良い睡眠をとる
- 歯のケア
- 感染症の予防
- 将来の妊娠・出産をライフプランとして考える
- 風疹・インフルエンザなどのワクチン接種をする
- パートナーも一緒に健康管理する
〈プレコン・チェックシート 男性用〉
- バランスの良い食事と適正体重のキープ
- 1日60分以上の運動
- たばこや危険ドラッグ、飲酒をやめる
- ストレスをためこまない
- 良い睡眠をとる
- 生活習慣病やがんのチェック
- パートナーも一緒に健康管理する
- パートナーとともに感染症の予防
- 風疹・インフルエンザなどのワクチン接種をする
- HPVワクチンの接種
- 自分と家族の病気を知る
- 将来の妊娠・出産やライフプランについてパートナーと考える
セルフチェックだけでなく、医学的な測定・検査によるチェック方法もあります。同じく国立成育医療研究センターでは、身体計測・血圧測定・尿検査・血液検査・画像検査を行う「プレコンチェック」を行っています。肥満度や白血球数、血小板数といった数値、感染症の有無を調べるものです。ベーシックプランで料金は3万8,500円となっています。
まとめ:今日の一歩が、未来の自分と大切な人のすこやかさにつながる
プレコンセプションケアとは、決して難しい検査を受けたり、健康面で理想的な生活を目指すものではありません。毎日の生活習慣を少しずつ整え、今の自分のからだに関心を持つことが、その核心です。
概念の誕生から20年。女性だけのものから男女ともに取り組むものへ、そして国の推進計画へと発展してきた歴史は、私たち自身も健康とどう向き合うべきかを示しています。
無理なく、心地よく続けられる習慣を一つ見つけてみる。その今日の一歩が、未来の自分や大切な人のすこやかさへとつながっていきます。
参考・出典
- 昭和大学「DOHaDとは」
- 荒田尚子「プレコンセプションケアとは」
- 日本助産評価機構「助産師教育におけるプレコンセプションケア」
- 国立成育医療研究センター「本邦初 将来の妊娠・出産を前提としたヘルスケアを総合支援する プレコンセプションケアセンターを国立成育医療研究センターで開設」
- プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会「プレコンセプションケア推進5か年計画〜性と健康に関する正しい知識の普及と相談支援の充実に向けて〜」
- 国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター
- 国立成育医療研究センター「プレコンノート」
