洗顔料のスクラブや、歯磨き粉に含まれるツブツブ。これは「マイクロビーズ」と呼ばれるもので、「気持ちいい使用感」を生み出すため化粧品などに使われるようになりました。天然素材よりも安価で均一な粒子が作れる「便利な素材」として世界中に広まっています。
しかし今、その弊害が見え始めています。マイクロビーズから生じる問題とは何なのでしょうか。
この記事のポイント
- 一部の洗顔料・歯磨き粉に含まれるマイクロビーズは、下水処理を通り抜けて海へ流れ出る
- 東京湾の魚類の約80%からマイクロプラスチックが検出されている
- 米国・EUでは法規制が進む一方、日本は大手企業の自主廃止が主であり法規制は未整備である
成分表に潜む「ポリエチレン」はどのような形で日用品に含まれている?
マイクロビーズの正体は、主に「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」といったプラスチックです。粒子が5mm以下であるため、家庭の排水溝から流れると、下水処理場のフィルターを通り抜け、そのまま海へ流れ出てしまうという性質を持っています。
海へ流れ出た微小なプラスチックは、自然分解されることなく半永久的に海を漂い続けます。そして、食物連鎖の過程で海の生物の体内へ取り込まれていくのです。実際に、東京農工大学の研究では、東京湾で採取されたカタクチイワシの約80%の消化管からマイクロプラスチックが検出されたというデータが報告されています。
さらに近年の世界的な研究では、人間の血液や胎盤、母乳などからも微小なプラスチックが検出されたという報告があり、私たちのからだへの影響がないかも注視されています。
米国・EUはマイクロビーズを規制済み。では日本は?
こうした環境や生態系への影響を背景に、世界では法的なルールづくりが進んでいます。
米国では、2015年に製造・販売を禁止する法律が成立しました。また、EUでも2023年のREACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則)の改正により、意図して添加するマイクロプラスチックの段階的な禁止がスタートしています。
一方、日本における現状はどうでしょうか。国内では大手メーカーや業界団体を中心に、代替素材への切り替えや自主的な廃止が進められています。しかし、国レベルでの法規制は未だ整備されておらず、罰則などもありません。
法律がないからこそ、現状を知ることは、私たち自身が日々の暮らしのなかで「何を選ぶか」という選択肢を持つことにつながります。
マイクロビーズが使われていない製品を選ぶには
できたらマイクロビーズを避けたい、と思ったら次のような日用品の選び方があります。
日用品を選ぶとき、成分表示を確認するという選択肢があります。「ポリエチレン(PE=Polyethylene)」や「ポリプロピレン(PP=Polypropylene)」が代表的なマイクロビーズの種類となります。
最近では、アンズの核、ホタテの貝殻、ソルト(塩)、クレイ(泥)といった天然由来の代替素材を採用したスクラブ製品も増えています。規制を待つ必要はなく、肌に触れるものを自分自身で選ぶことは、今日からできるアクションです。
まとめ:「除去」を目指すより、無理のない選択肢の積み重ねが大切
現代の生活から、プラスチックを100%排除することは困難です。だからこそ、完璧を目指すのではなく、まずは「自分の肌に直接触れるもの」から、自分にも地球にも優しいものへとシフトしていく心地よさを提案します。
なぜその製品が生まれたのかを知り、現状の課題を見つめ、自分にとって納得のいく選択をする。毎日の小さな選択の積み重ねが、未来のからだと環境をデザインしていく第一歩となります。
参考・出典
- 折兼「『マイクロビーズ』とは」
- 高田秀重「マイクロプラスチック汚染の現状、対策、国際動向」
- 東京大学未来社会共創推進本部「乳児や胎児に迫るマイクロプラスチック〜ヨーロッパの研究者らが哺乳瓶や胎盤から検出」
- 米FDA「The Microbead-Free Waters Act: FAQs」
- 欧州委員会「Commission Regulation (EU) 2023/2055 - Restriction of microplastics intentionally added to products」
