自然界に「ゴミ」はもともと存在しません。ゴミを出す生き物は、地球46億年の歴史の中で人間だけ。その人間が生み出した素材のひとつが、プラスチックです。便利で、軽くて、安い。でも今、その便利さの裏側で起きていることが、少しずつ明らかになってきています。

世界のプラスチック廃棄物は、2000年の1億5,600万トンから2019年には3億5,300万トンへと、わずか20年で2倍以上に増えました(経済協力開発機構:OECD)。リサイクルされたのはたった9%に過ぎません。残りは埋め立てられるか、焼却されるか、自然界に流れ出ています。つまり、プラスチックがゴミとして環境の中に紛れ込んでしまっているのです。

この中で細かく砕けたマイクロプラスチックは、今や人間の血液・胎盤・母乳からも検出されています(アムステルダム自由大学、2022年)。調査対象となった全ての胎盤からマイクロプラスチックが検出されたという報告もあります。

国連を中心に法的拘束力のある国際条約の策定が進んでいますが、ルールが変わるのを待つより先に、今日の買い物から始められることも。これ以上、ゴミ、プラスチックを出さないためにどのような視点を持てばよいのか、見てみましょう。

この記事のポイント

  • 世界のプラごみ発生量は2000年から2019年で2倍以上に(OECD)
  • マイクロプラスチックはすでに人間の血液・胎盤・母乳からも検出されている
  • 国連を中心とした国際条約の策定が進んでおり、私たちの暮らしは近い将来変わっていく

世界が一丸となって挑む、歴史的な「国際条約」の現在地

プラスチックの問題は、もはや個人の努力だけでは追いつかない規模に広がっています。

OECDの報告書「Global Plastics Outlook」(2022年)によると、世界のプラスチック廃棄物は冒頭で記したように2000年から2019年にかけ倍増しました。リサイクルされたのはわずか9%に過ぎません。

そして近年の研究では、細かく砕けたマイクロプラスチックが、人間の体内にまで到達していることが分かってきました。2022年のオランダの研究では、健康な成人22人中17人(77%)の血液からマイクロプラスチックが検出されています。

さらに、人間の胎盤や母乳からも見つかったという報告があります。

(参考:OECD「Global Plastics Outlook」2022年/アムステルダム自由大学の研究、科学誌『Environment International』2022年掲載)

体内に入ったマイクロプラスチックがどのような影響を及ぼすのかは、まだ明らかになっていません。しかし、マイクロプラスチックにダイオキシンなどの有害物質が付着することがあり、これが体内に入るとがんの誘発、免疫機能低下、生殖機能障害の要因となる場合があります。

こうした状況を受けて、国連環境計画(UNEP)を中心に、プラスチック汚染を終わらせるための法的拘束力のある国際条約の策定が進められています。日本政府も交渉に参加しており、世界共通のルールがつくられようとしています。

(参考:環境省「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた政府間交渉委員会の結果概要」)

私たちの暮らしはどう変わる?使い捨てプラスチックの段階的廃止

この条約が実現すると、私たちの日常にも変化が及びます。

前述の国際条約に関する議論では、プラスチックの「製造から廃棄まで」のライフサイクル全体が対象になっています。将来的には、特定の使い捨てプラスチック製品の製造や使用が制限され、代替素材への切り替えが社会の「当たり前」になる可能性があるということです。

すでにEUでは、使い捨てのストローやカトラリーの流通が禁止されています。日本でも2022年にプラスチック資源循環法が施行され、コンビニのスプーンやホテルのアメニティが有料化・辞退制になりました。こうした動きは、今後さらに広がると見られています。

自分のからだの中にすでにマイクロプラスチックが入っているかもしれないという事実は、遠い国際条約の話ではなく、今日の買い物の話でもあります。

一歩先を行く暮らし

国際条約の締結・発効の前に、私たち自身ができることもあります。2つのポイントを紹介します。

製品を「ライフサイクル」で選ぶ視点

「安いから」「便利だから」という理由だけで選ぶのではなく、「この製品は回収やリサイクルしやすい設計になっているか」「メーカーは環境への取り組みを公表しているか」という視点を一つ加えてみる。完璧な正解はなくても、意識するだけで選ぶものは少しずつ変わります。

リフィルやリユースを当たり前に楽しむ

詰め替え(リフィル)製品を選ぶ、マイボトルを持ち歩く、リユースできる容器を使う。こうした選択を、義務感や我慢ではなく、洗練されたライフスタイルの一部として楽しむ人が増えています。「使い捨てない」という選択が、心地よさにつながる時代です。

世界のルールが変わる今、心地よい「新常識」の先取りを

「大量に作って、大量に捨てる」という時代は、終わりに向かっています。それを不便を強いられると受け止めるのではなく、ものの選び方が変わると考えてみてはいかがでしょうか。

世界のルールが変わろうとしている今、その変化を先取りして、自分にとっても地球にとっても心地よい暮らしを少しずつつくっていく──。

目に見えないほど小さなプラスチックの問題だからこそ、目に見える「今日の選択」から始められることがあります。

参考・出典

  • 東京新聞「母乳や血液から『プラスチック』検出…地球規模に広がる汚染 人の健康は守れる?国際ルールづくりの現状は」
  • wired.jp「マイクロプラスチックは、人間の血液にも潜んでいる:研究結果」
  • 環境省「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要」
  • 環境省「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた日本主催非公式少数国会合の開催」