仕事を急に休む人が職場にいたら、「また休み?」と感じることがあるかもしれません。でも、その休みの背景にあるものは何でしょうか。

一緒に働く人 の急な予定変更、お休みを目にしたとき、「何か理由があるかもしれないけど、休まれると困るな」「タスク管理が甘いのでは」と感じることがあるかもしれません。しかしながら、その理由が不妊治療の場合、その予定変更は本人にもコントロールしづらいものです。

急な休みが必要になる事情は、誰にでも、いつでも起こり得ます。この記事では、知っておくと見え方が変わる「仕事と治療・介護の両立」の現実と、組織として備えられることを整理します。

この記事のポイント

  • 不妊治療は通院日が直前まで確定しない、本人にもスケジュールを管理しづらい
  • 急な休みが必要な事情(不妊治療・介護・病気)は誰にでも起こりうる
  • 個人を責めず「お互い様」で支え合える仕組みが、人材の離職を防ぎ組織を守る

不妊治療に取り組む人が「急に」休む理由

不妊治療の通院は、女性の月経周期や卵子の育ち具合を見ながら、医師が直前に判断します。次の受診日が前日や当日に決まることも珍しくなく、月に4回から10回以上の通院が必要になる場合もあります。スケジュールが読めないのは、配慮不足ではなく、医療の仕組み上避けられない現実です。

その一言が、プレッシャーになることも

「最近よく休むけど大丈夫?」「少し仕事をセーブしたら?」。こうした言葉に悪意はなくても、治療中の人にとっては「職場に迷惑をかけている」というプレッシャーに聞こえることがあります。

実際に、仕事との両立が難しいとされる事情はさまざま存在します。

不妊治療では、治療経験者の16%(女性では23%)が仕事と両立できずに離職しています。介護では、年間約10万6,000人が離職しており、2030年には約318万人の労働者が介護との両立に直面すると試算されています。

また、NPO法人フォレシアの調査によると、不妊治療を理由に離職した人のうち、不妊治療のために離職すると伝えなかった人の理由として、52.9%が「上司の理解を得られそうになかった」からだと答えています。さらに、フェリング・ファーマシューティカルズの調査では、「自分の職場は不妊治療を人生における重要なできごとと認識しているか」の問いに、その通りだと答えた不妊治療経験のある従業員は27%しかいませんでした。これは国際調査によるもので、日本の従業員と雇用主も調査対象となっています。

介護に関しても似たような状況です。経済産業省の「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)」によると、介護に対する勤務先からの支援について「あまり支援されていない」「まったく支援されていない」と答えた人の割合は合わせて41.1%に上ります。

がんでは、診断を受けた就労者の約2割が退職・廃業に至っています。

仕事をみんなでカバーする方法

誰かが休んでも選択肢が一つあるだけで仕事と不妊治療・介護などとの両立のハードルが下がります。その具体例を取り上げます。

柔軟な働き方の選択肢を考える

1時間単位の有給休暇やテレワークなど、突発的な数時間の離席に対応できる仕組みがあるだけで、仕事と治療・介護の両立のハードルは格段に下がります。

チームでカバーできる体制

急に欠勤しなければならない状況は、誰でも起こり得ることです。そこで、チームで自然にカバーし合える体制がつくれれば、不妊治療に限らず、育児・介護・突然の病気など、あらゆる場面で職場を支えます。

不妊治療連絡カードなどのツールを使う

厚生労働省が推奨する「不妊治療連絡カード」は、口頭で詳しい事情を説明しなくても、必要な配慮の内容を職場に伝えられるツールです。口頭での説明には心理的な負担が伴います。書面で共有できる仕組みがあると、伝える側にも受け取る側にも負担が小さくなります。

まとめ:「理解」と「お互い様」が、組織の未来を守る

働く人の急な休みに対して、個人を責めるのではなく、「コントロールできない事情が誰にでもある」という視点を持つだけで見え方が変わります。

不妊治療も、介護も、病気も、いつ誰の身に起きてもおかしくないことです。「お互い様」が当たり前の空気がある職場は、結果として全員が働きやすい場所になります。

それをつくるのは、大きな制度改革よりも、一人ひとりの「そうか、大変だったね」という一言かもしれません。

参考・出典

  • 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」
  • 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
  • 総務省「令和4年就業構造基本調査」
  • 厚生労働省「患者体験調査」2018年
  • NPO法人フォレシア「不妊治療による離職について アンケート調査結果」
  • 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン ~全ての企業に知ってもらいたい両立支援のアクション~ 参考資料集」
  • 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」